Adobe Premiere Proで(ちょっとだけ)nanoKONTROL2を使う

ちょっと前に書いたソフトシンセでマウスを使いたくない病が動画編集にも感染して、MIDIコントローラーでPremiere Proの操作ができないか調べてみました。

Adobeのヘルプなどを見たら幸運にもできるようなことが書いてありました。しかし具体的に手持ちのnanoKONTROL2ならどんな風にやればいいのかという情報が全然ないのです。ちまちまといじっていたらそれなりに使えるようになったのでここにわかったことを書きます。使う人が少ないからなんだろうけど、あまりにも具体的な情報が少ないので載せておきます。

自分用のメモなので情報は雑です。あらかじめご了承ください。

ちなみに環境はPremiere Proは2018年Macバージョンです。

nanoKONTROL2の起動モード

まず最初にnanoKONTROL2の起動モードはAbleton Liveでやりました。Protoolsモードが意外と(?)全然ダメで、次にLiveモードで起動したらそこそこ行けたので他のモードは試してません(なので、他のモードの方が良い結果になることはあり得ます)。なお、nanoKONTROL2の起動モードについてわからない方はnanoKONTROL2のマニュアルをググってみてください。

以上お含みおきの上で、まずは成果報告から。

成果

  • 「SET」のボタン二つには機能が割り当てることができない。
  • Cycle, MARKER SET, MARKER←, MARKER→には任意の機能を割り当てることが可能。
  • 巻き戻し・早送り・停止・再生・録音はそれ相応のコマンドが固定で割り当てられる。
  • フェーダー・パンポット・ソロ・ミュートは音声トラックに自動的に割り当てられる(おそらく8トラック分)

つまり、実質的に自由に機能をアサインできるボタンはCycle, MARKERSET, MARKER←, MARKER→の4つだけ。それでも使う価値があると思うかどうか……結構微妙?まあ、割り当て次第でそこそこ使えるかもしれません。

以下、具体的な設定。

Premiere Proの設定

以下の設定を済ませた上で、

・まず、『 環境設定>コントロールサーフェス 「追加」』をやる
・ デバイスクラス:Mackie
・デバイスの種類:Logic Control
・MIDI入力:nanoKONTROL2 SLIDER/KNOB

Premiere Proで表示されるMackie Control プロトコルとnanoKONTROL2の割り当て対応

Premiere Pro / nanoKONTROL2

Marker / MARKER ←
Nudge / MARKER →
Cancel / MARKER SET
Cycle / CYCLE

機能を割り当てする画面ではPremiere ProのMackie Controlプロトコルのみが表示されているので、Premiere ProでMarkerと表示されていたらnanoKONTROL2のMARKER←だな、と考えればよいということです。NudgeだったらnanoKONTROL2のMARKER→。以下略。この4つによく使う機能を割り当てればそれなりに便利……かな?

その他のボタン・フェーダー等の動作状況

巻き戻し・早送り・停止・再生・録音

巻き戻し・早送り:音声つきの逆再生・再生(何度か同じ方向のボタンを押すと速さが変わり、ある程度の速さになると音声は再生されなくなる)

停止:再生中なら停止してくれる

再生:止まっているときに押すと再生、再生しているときに押すと一時停止

録音:再生中に押すとアクティブになっているトラックでオーディオ録音が始まる(ちゃんと確認してない)

フェーダー・パンポット・ソロ・ミュート

おそらく1〜8までのトラックのオーディオミキサー的な操作が可能(Premiere Proデフォルトの数トラックでは完全に動作していた。8トラックまで増やした際に全部ちゃんと動くかどうかは確認していない)。

(個人的には動画編集でこんなにオーディオトラックいらないので、この部分を他の機能にアサインできたらいいんだけどなあ)

KONTAKTにEXS24のプリセットを読み込む方法

普通に読み込もうとすると強制終了

Native Instrumentsのサンプラー、KONTAKTはHALionやGigaStudioなど様々なフォーマットのプリセットを読み込むことが出来るらしい。そして当然我らがLogic ProのEXS24もいけるだろうと思って読み込んでみたら即座に強制終了……

検索したらマニュアルにも自信満々で読み込み方法が書いてあるけど全然ダメです。

NIには頑張って仕事してほしいところですが、調べたらすごい人が原因と対処法を調べてくれていた。ありがたい!

https://www.native-instruments.com/forum/threads/loading-exs-instruments-broken-solution-provided.325128/

備忘録とこの件について日本語情報を増やすため、上記リンクの内容を参考に原因と対処法を書きます。自分がMac使いなのでWindowsの場合については割愛していますが、上のリンクで問題解決に導いてくださった方はWindowsユーザーっぽいのでWindowsの方はリンク先を参考にしてみてください。

原因

KConvert.bundle(WindowsだとKconvert.dll?)といういかにもKONTAKT用に変換を担っていそうなファイル。KONTAKT5.1.0より新しいバージョンのKConvert.bundleが悪さをしているらしい。

対処法(Mac)

まず、KConvertのインストール先はここ。

/Library/Application Support/Native Instruments/Kontakt 5/

ここにあるKConvert.bundleを以前のバージョン(KONTAKT5.1.0)で上書きすれば良い

じゃあその以前のバージョンってどこから取ってくるの?ここです。

https://www.native-instruments.com/en/support/downloads/update-manager/?q=kontakt&t=updates

KONTAKT有償バージョンを持っている人だったら当然アカウントを持っているはずなのでログインすれば検索画面が出てくる。そこでKONTAKTと検索すれば5.1.0のダウンロードリンクが出てきます。

で、落としたdmgファイルをダブルクリックするとパッケージが出てくるので、右クリック(コンテクストメニュー)から「パッケージの内容を表示」して深い階層に入っていく。

KConvert.bundleがある場所はContents>Packages>Kontakt 5 System Extensions.pkg>Contents>Archive.pax.gz

Archive.pax.gzは圧縮ファイル。Macならダブルクリックすると勝手に解凍が始まり、僕の環境の場合はダウンロードフォルダに解凍結果がポンと出てきた(解凍先がどこになるか不安だったらArchive.pax.gzをどこか適当な所に移動して解凍する)。

で、解凍してできたNative Instruments>Kontakt 5の中にKConvet.bundleがあります。このKConvert.bundleを以下にコピーすればOK。

/Library/Application Support/Native Instruments/Kontakt 5/

結果

めでたくクラッシュせずに読み込めるようになりました。

しかしまだ課題はあります。

早速LogicのEXS24ファイルをいくつか読み込んでみたところ、

  • 普通に読み込める音源
  • サンプルのマッピングがうまくいってなさそうな音源
  • 読み込めても音が鳴らない音源

この三通り存在することがわかりました。まあ、だいたい他社フォーマットの読み込みをするとなんかイマイチな感じになることが多いので、どの辺まで妥協するかが肝心。本気で対処しようとしたらKontakt Scriptに手を出さなきゃいけないだろうし。

僕個人としては代替可能かも知れない程度の仕様の不完全性を直すために不慣れなことを勉強するのは嫌だから、現時点で使えないプリセットは潔く諦めますが、奇特な方がいつかEXS24とKontaktのコンバートを完全互換にしてくれることを祈って筆を置きます。

(Ableton LiveでEXS24を読み込む件も誰か改善してくれると嬉しい!もっともAbletonの方がKontaktより全然良い感じで読み込んでくれてますが)

ソフトシンセによるマウス酷使から体を守るための悪戦苦闘

まず最初に、横浜ボートシアター「樋口一葉作品を語る」3月10日(日)大森公演が無事終わりました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。知り合いの方、初めての方も含め、終演後に声をかけていただき嬉しかったです。「以前の公演ではあなたの音は邪魔だと思っていたが、今ではあなたの音じゃないと駄目なんだと思うようになった」という過分なお言葉もいただきました。照手(愛護の若だっけ?)の台詞に「文にて人を殺すとはこのことか」みたいなものがあったかと思いますが、これを言われた時、間違いなく僕は殺されました!

さて、本題(の前置き)。

最近マウス作業が多く、右肩甲骨の張りが尋常でない。マウス作業増加の背景には色々理由はあるのだが、現在一番の原因は、ソフトウェアシンセサイザーの音作り。

ソフトウェアシンセというのはPCの中で使えるバーチャルなシンセサイザーのこと。PCでの音楽作りがもはやデファクトスタンダードと言っても良いくらいの時代になった昨今では、「有償・無償」「減算・加算・ウェーブテーブル方式」等々膨大な種類が存在している。

ハードウェアのシンセサイザーを一台買うのに比べればソフトウェアシンセは省スペース(PC一つあれば良い)だし、比較的値段も安かったりするので、居住空間が狭い日本人にはとてもありがたい。

我らの身体を蝕むソフトシンセの例

Massive

今いくつか研究しているシンセの一つ、Native InstrumentsのMassiveというド定番シンセは、とにかくパラメーターが多い。

このスクリーンショットで見えているのだけで28個白いノブがあるが、それらを制御するモジュレーション部分にもたくさんノブやらボックスやらがあり、しかもこのスクリーンショットの画面においてもノブ以外でイジれるところはまだまだたくさんある。多すぎていちいち数えたくない。ただ、「たくさん」イジれる場所がある、とだけ言っておきたい。(もしこれがハードウェアシンセだったらどれくらいの大きさになるんでしょうね?)

Operator

次に、Ableton Liveという音楽制作ソフトウェアに入っているOperatorというシンセ。これもスクリーンショットでざっと数えてノブが22。しかしこのシンセはボックスやら数字で表示されている箇所やらが大体全部数えられるので、やはりイジることのできる箇所は「たくさん」なのである(ところでNative Instrumentsと比べると、Abletonのレイアウトは無駄を廃していてとても見やすいなと思いません?)。コンパクトな外見のクセして相当たくさんパラメーターがついている!

ちなみにこのシンセにも、スクリーンショットでは隠されている部分が7箇所存在し、そこにも相当量のパラメーターがある。合計でいくつあるか数えきる前に寿命が尽きそうです。

FM8

あと、今はまだイジってないですがそのうち研究したいと思っているNative InstrumentsのFM8。

左のメニューっぽいところをクリックするとそれぞれ違う画面になって、知的好奇心とゲンナリ感が同時に湧いて頭が混乱します。

対策(本題)

さて、実はここからが本題。以上で見てきたように、現代のソフトウェアシンセサイザーの多くは、イチから音作りをする場合ものすごい量のマウス作業が発生してしまう。こういうことを1日中やっていると、腕がシオマネキみたいになるか、その前に肩腕が壊れるか、というレベルで酷使してしまう。

こういう事態をもちろんメーカー側は把握していて、例えばNative InstrumentsやAbletonなどはマウスでの作業量を減らしてくれるような、使い勝手の良い自社製コントローラーを販売している。しかし、コントローラーとして潰しが効かないんじゃないかという疑念や、専用のものを買うなんてなんか癪という気分的な問題もあり、購入にはいたらず(ちなみにAbleton Liveに特化したコントローラー、NovationのLaunchpadは2種類持っていますが、これは別枠)。

考えられる限り、そういう人が取るべき方策は三つ。

  1. マウス作業を減らせるようなコントローラーを導入する(今回はiPadアプリ等のタッチスクリーン系コントローラーは除外)。
  2. マウス作業そのものが身体的負担の少ないものになるよう投資する。
  3. 自分でケアする/マッサージ・整体などに行く。

自分は3.の自分でのケアを主軸にしつつ、ちょっと前は2.にあたるようなトラックボールも使っていた(しかし壊れた)。

1.の筆頭に当たるMIDIコントローラーはあくまでオートメーションを書くときなどが主体で、マウス作業を楽にするという発想ではやってこなかった(それで十分だった)。

しかし、先述の通り最近はマウスでの作業量が異常に増えたので、とうとう体が悲鳴をあげつつあり、昨日などは息を吸っただけで右肩が痛くなるくらいまで悪化してしまった。流石にこれはヤバい。

というわけで、自分なりに対策を考えた。

トラックボール

まず最初に、トラックボールを使う。これで実際どれくらいの負担軽減になるかはわからないが、身体的な問題だけでなく省スペース性も同時に達成できるので導入決定。

MIDIコントローラー

次に、マウス作業を減らすためにMIDIコントローラーを使う。特定のソフトウェアを対象にしたものだと先ほど書いたように若干心理的に微妙なので、今手持ちのもので一番良さそうなものを見繕って見た。まず良さそうなのは、BEHRINGERのBCR2000。言わずと知れたツマミお化けのMIDIコントローラーである。机に収まるかな……という問題を別にすればなかなか良い。

これをどういう風に使うかが問題だ。

サードパーティー製シンセの場合

まず、MassiveはMIDIコントローラーの割り当てを保存できる(っぽい)。複数トラックにMassiveをロードしてもその都度同じコントローラーのツマミでパラメーターを変更できる(っぽい)。だから、複数トラックにMassiveを立ち上げた際特に工夫しなくても、同じコントローラーの同じツマミで同じパラメーターをいじれる(っぽい)。

次にFM8。Massiveと違って右クリックしてもMIDI Learnのメニューが出てこないので注意。右上NIのロゴ左にあるMIDIジャックのアイコンを押すとMIDIラーンモードに入る(ここまでググって確認済み)。そして、アサインした結果が右側のダークな表にリストとして出てくる(はず)。SaveとかLoadボタンがあるので、コントロールの方法を保存できる(はず)。だから、複数トラックにFM8を立ち上げた際特に工夫しなくても、同じコントローラーの同じツマミで同じパラメーターをいじれる(はず)。

以上のDAW付属でないサードパーティー製シンセ(と言ってもNative Instrumentsだけだが)についてはコントローラーを快適に使う目処がついた。

DAW付属のシンセの場合(Ableton Live)

さて、次はOperator。Ableton LiveのMIDI CCアサインは一つのCCメッセージ(つまりはMIDIコントローラーのノブ一つ)につき特定のトラックの特定パラメーターという縛りが課されるため、複数トラックに立ち上げたOperatorを自在に操るということは難しい。

結論から言うと、Ableton Liveのシンセを気楽にMIDIコントローラーでエディットしたいという場合は、Remotifyという会社のControl Surface Studioというアプリを使うのが(時間も含めた)費用対効果が高そう。

https://remotify.io/product/control-surface-studio

仮にこいつを使わない場合どうするのがマシなのか考えてみる。

  1. 新規プロジェクトのトラックにOperatorを立ち上げる。
  2. 気の赴くままにMIDIアサインする。
  3. その状態でプロジェクトを保存し、以後この音作り用プロジェクトで音作りをする。

この場合の難点はもちろん音作りを別プロジェクトでやらなきゃいけないことにある。トラックを作るときに一から新しい音を作る必要性に駆られた際、結構不便。どうしてもサードパーティー製のシンセを使う頻度が増えそうだ。

DAW付属シンセの場合(Logic Pro X)

ちなみに、Logic Pro Xだとプロジェクトを跨いだMIDIコントローラーの割り当てが可能で、割り当てのプリセットの保存・読み込みもOK。ただ、同じシンセを複数トラック立ち上げる場合は音作り用のトラックでエディットを済ませた後にプリセットを保存→別トラックで新規立ち上げ→プリセット読み込みといったワークフローにする必要がありそう。まあ、これくらいだったらそこまで不便に感じなさそう(多分もっと突っ込んだ設定もできるだろうけど)。

余談

ソフトウェアシンセが大量に溢れる昨今、ハードウェアシンセ/エフェクター/ミキサーがいまだに好まれるには音以外にも上記のような事情がありそうだなと思いました(ハードシンセは体に優しい!?)

ところで、パラメーターが多いシンセは、複数のパラメーターを同時に動かすためのメタパラメーターみたいなものがあり、それをMIDIコントローラーにアサインしてね、と言わんばかりの設計になっていることが多いようです。しかもそのメタパラメーターは8つであることが多い。これは人間の認識の限界に基づいた設計なのかなあ、なんて感じます。

Logic ProのAlchemyは他のDAWでも動くようにして欲しいと切に願わせるシンセなのに、Logic ProはRewireのスレーブにならないんで悲しいです。まあ、Logic→Abletonの順で立ち上げてAbletonからIACバスでMIDIを送り、Logic側の発音をループバックしてAbletonに持ってくればとりあえずAbletonでMIDIを制御しつつ録音も可能ではあるのだけど……。

なお、一度ハードシンセを手元に置いて触っておくと、音楽制作のワークフローの見直しもできてとても良いということが最近わかりました。ハードシンセもとても良いものです。