ギター音作りの個人史(『極楽金魚』を中心に)

『創作影絵人形芝居「極楽金魚」』は2012年に初演され、以降断続的に各所で公演を重ねている作品。
自らのキャリアの初期に担当した作品ということもあり、音楽は回を重ねるごとにかなりの変更がある。
なぜこの作品を中心に自分のギターの音作りを書くことにしたかというと、それはこの作品で初めてギターを演劇の劇伴に使ったからというだけでなく、複数の時期にまたがって再演されたからということもある。また、割と頻繁に上演していた当時の気分(というか意図)を思い出しておきたいな、ということもあるし、この作品以来、色んな作品でギターを使う契機ともなったし……。と色々と自分のギターを考える上で楔となるような作品なのです。
というわけで、久々の『極楽金魚』で新たに仕込みをする前に、自分のギターの短〜い歴史を勝手に振り返っておこうかなと。

『極楽金魚』では、最初はPCやらジャンベやら色々使ってたんだけど、どんな感じだったかいまいちよく覚えていない。かなり効率の悪いシステムだったことは確か。

これじゃいかんと思い、ギター中心のシステムに変えて最初に使ったマルチエフェクターが、DigiTech RP-355。これは付属ペダルに任意にエフェクトのパラメーターを割り当てられるだけでなく、LFOなんかも利用できたので、複雑なテクスチャを表現する上で、とても便利であった。安めな割には相当作り込める素晴らしいマルチエフェクターです(これは非常時のために今も持っている)。

次に使ったのはRoland GR-55。(自分の大雑把なプレイスタイルのせいもあるけど)GKピックアップが壊れやすいのが仇となり手放してしまったが、かなり愛着のわくギターシンセであった。シンセ部分だけでなく、モデリング、エフェクトも充実していて、音の作り込みが大変だったが、やり甲斐はあった。作った音を片っ端からiPhoneに録音していったりもしたなあ……。今持っていたら、どんな音を作るんだろう、と我ながらちょっと懐かしく思い出せる一品です。

『極楽金魚』はGR-55時代を最後にやっていないが、その間他の作品(『にごりえ』『恋に狂ひて』など)でコンパクトエフェクターをたくさんつないでみたり、LINE6 M13を使ったりもした(LINE6って口車がうまいというか、個々のエフェクトの説明がとても刺激的に感じるんですよね。だから、言葉で聞くと結構ぶっ飛んだ音が出そうに思えるんだけど、実際弾いてみると、予期していたよりは大人しい優等生なサウンド。もちろん、音自体はとてもうまくできているので、普通に使う分には全く問題ない。YAMAHAの傘下に入った理由が、良くも悪くもわかるなあって感じ)。

さて、それでようやく今回のシステムになる。今回はGuitar Rig + αでやろうと思っております。ここに来て、ライブ演奏において一番邪道(?)な方法を試すことになりました(実は、既に『恋に狂ひて』KAAT公演で実践しているんですけどね。)

Guitar RigはPC上で動作するバーチャル・エフェクターとバーチャル・アンプシミュレーターのパッケージ。ギターだけでなく、ベース、さらにはなぜかボーカル用のエフェクトプリセットなんかも入っており、相当色んなことに使えます。

最近Guitar Rigに宗旨替えした理由は、なんてったって荷物が少なくて済むのがでかい。M13にしろGR-55にしろ運ぶの結構大変ですからね〜。

じゃあなんで今までGuitar Rigにしなかったのと言われたら、それはライブでやるにしては、レイテンシーや安定性に問題があると「思い込んでいた」から(数年前の話ですが、雑誌を見てもGuitar Rigはまだライブには使えない、という意見が大勢を占めていた)。

確か『恋に狂ひて』の稽古の時だったと思うけど、ふとAI/FからGuitar Rigの音を出してみたら、レイテンシーが全く気にならない感じになっていて、「これはいける!」と感じて以来、もうこれしか見えない(笑

今回の挑戦としては、MIDI Guitarというプラグインを使って、なんちゃってギターシンセをやったり、Roland KC-110(キーボードアンプ)から音を出してみたり、ということをするつもり。

MIDI Guitar経由のギターシンセ化は色々難がありそうなのですが、ソフトウェアのアップデートにも期待しつつ、なんとか面白い音が作れるようにしていきたいところです。

キーボードアンプを敢えて使うのは、音がSRスピーカーに近い(と思われる)ためです。ギターアンプはやはり周波数特性が特殊で、シンセの音を存分に利用するには辛いところがあります。今思えば、GR-55を買った時に、セットでKC-110とかを買えばよかったんですよねえ……。シンセの音域を存分に引き出せず、悪いことをした……。そういえば、一時期GR-55のステレオアウトから民生用のスピーカー(TimeDomain mini:これは小さい割に結構でかい音が出るし、解像度が結構高いので、小規模公演で重宝した)で演奏していた時もあったな。GR-55の場合、下手にギターアンプにつなぐよりも、こちらの方が正解かもしれないですね。

さて、振り返りはこれくらいにして、次回からは試行錯誤の過程を少しずつ書いていく予定。続く!

2016年7月近況

『恋に狂ひて』KAAT公演が終わり、
なんとなく自分の中で一区切りがついたので、
新たにドメインを取得してブログを書くことにした。
以前使ってたドメインを更新せず、新しいものにした理由は、
前のはURLが直感的でなく、
分かりづらかったから、ということによる。

ここでは僕の考えていることを
なるべく気兼ねせず書いていきたい。
というのも、ボートの公式WEBでも書こうと
思えば書けることは様々あるが、
公開するにあたっては色々と気を使う面もあるのだ。
(劇団員でない僕が書いた記事がずらっと並ぶのも気が引けるし)

昨日は、横浜ボートシアターの制作関係のミーティングがあった。
『恋に狂ひて』KAAT公演に関する作業、反省、
そして今年後半に関することが様々話し合われた。
今年後半のことはまだ水面下のことも多いが、下半期も忙しくなりそうだ。
とりあえず今から準備の連続である。
現段階でも、仕込みで悩ましいことが幾つかあり、
いろいろ調べながら進めている。
現状の横浜ボートシアターで可能な
音楽のあり方というものには毎度様々な条件があるのだ。
しかし、おかげさまでだいぶ勉強させていただき、
以前に比べれば決断のスピードが速くなった。
結果として独自のスタイルが築ければいいな〜なんて思っているが……
とにかく、良い公演になるよう、精一杯やっていきたい。