『名盤レコーディングから読み解くロックのウラ教科書』

Kindle Unlimitedのおすすめにあったので読んでみた。とても面白かった!70年代のロックじゃなきゃ〜、とか、レコードが〜、とか、デジタルは〜、など音楽通が言いそうなことを片っ端から解説してくれています。オカルト的な話は一切なく、全てをロジックで説明してくれているので、音楽を作っている人ならば少なからず参考になる部分があるのではないかと思います。

ある時期のジミヘンのフェイザーは人力でやっていたとか、リンゴ・スターはコンプで潰れまくっている音を計算しながら叩いていたとか、エンジニアのインタビューやレコーディング裏話をよくチェックしている人だったら知っていることなのかもしれないが、自分は全然知らない話ばっかりで、いちいち膝を打ったり、納得したり。大変勉強になりました。

なお、録音された音楽の好き嫌いが、実はかなりの部分エンジニアの音作りに影響されているのではないか、というのが本書指折りの積極的な主張(だと思う)。確かに録音の質感というのは非常に大事で、最近でもやたらとMS処理されてワイド感の強い音源が多かったりするので、機材(あるいはプラグイン)によって時代の音が生み出されているのは確かでしょう。

著者の業界予想として、再生環境的に音圧競争の意味がなくなりつつある現在、隙間のあるアレンジで、一つ一つの楽器の存在感が強い音楽が好まれるようになるのでは、と書いてありました。それは今既にアメリカのシーンではそうなってる感じがあります。Vulfpeckとかネオ・ソウル界隈をイメージするとわかりやすいですね。ごく簡素なPAで一流ミュージシャンがライブを行うTiny Desk Concertもそういう流れにがっちりハマった感があります。

隙間の多いアレンジが主流になると、当然ながら演奏者個人の実力が問われることになります。2000年代〜10年代にかけては色々すったもんだがあった音楽業界ですが、個人の力量が素直に問われる時代になりつつあるのだとすれば、本当に音楽が好きな人にとっては良い時代なのかもしれません。一生かかってもかないっこないような若い実力者がもう続々とSNSやYoutubeで頭角を現している中、僕も頑張りたいと思います。